第12話
それは…真智子がまだ、中学生だった頃のこと。
普段通りに朝食を済ませ、そろそろ家を出ようと席を立ったその時、突然父に真剣な顔で呼び止められた。
「真智子…。今日から冬樹くんが、うちに来るんだよ」
「…えっ?ふゆき…?」
突然の話に。
最初は意味が分からず、?を飛ばしていた。
「真智子のいとこの冬樹くんだよ。ほら…夏樹ちゃんと双子の…」
双子…と聞いて、初めてその人物が脳裏に浮かんだ。
「ああっ!あのそっくりな双子の…。前に一度だけ遊びに来たよね。『まちこおねぇちゃん』なんて言いながら、二人して私の後をずっとくっついて来たんだよね」
その可愛かった小さな兄妹の様子を思い出す。
いとこでありながらも、歳も離れているせいかあまり行き来する機会が無かったのだが、以前…一度だけ家族でこの家に遊びに来たことがあった。
でも、二人はあまりにもそっくりで、結局…どちらがどちらなのかまったく区別もつかないまま別れてしまったのだが。
父も、その時の様子を思い出していたのか、少し微笑みを浮かべて話をきいていたのだが、不意に口を引き結ぶと、今度は辛そうな顔になった。
「実はね、真智子…。その冬樹くんのお父さんとお母さん、それから双子の夏樹ちゃんが…」
「?」
「先日、交通事故に遭ってね…。亡くなってしまったんだ」
「え…?う…そ……」
思いもよらなかった言葉に。
真智子は、驚きで一杯だった。
「ちいさな冬樹くん、独りぼっちじゃ…かわいそうだろう?」
聞けば、まだ彼は小学二年生だという。
そんな小さな身で、家族を失ってしまった彼の気持ちは、到底自分には想像も出来ないものだ。
「だからね、冬樹くんは今日から…うちの子になるんだ。真智子もお姉ちゃんになれるよな?」
父も実の弟を亡くしたのだから、きっとショックに違いなかった。
だから、自分も出来る限り協力してあげたい…そう思った。
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