預金者たちの相談


出発のまえに、ロビーの列に声をかけました。

スノットさんが言います。


「みなさん、未雪の星へ行きます。どの資産を、どれだけ託しましょう?」


すると、動物たちは口々に。



カマキリ 「では静止の刃を少々。風が止まる一瞬の冴えです」


ホタル 「微光の小瓶を。暗さを怖がらない、やわらかな灯」


ネコ 「丸くなる許しを一袋。寒い夜は、無理しないこと」


クジラ 「深海の重さを。音が遠くまで届くように」


トナカイ 「帰巣の記憶を。雪原でも、道を見つけられるように」



列の端から端まで、さまざまな冬の価値が積み上がっていきます。

こおり小人たちは、それを雪為替に組み直し、スノットさんの手帳に白い文字で記帳しました。文字は見えないが、冷たく柔らかい触感だけが指先に残ります。


ゴールドマン君がうなずきました。


「これで準備は整いました。あとは白竜のトンネルへ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る