第7話

今日の撮影は、新人女優のシーンが主になる。


台詞は、完璧に覚えて来ているのだが、撮影は初めてのようなので不慣れな点が多い。


それをベテランスタッフは、見逃さなかった。


監督の愛子は、求める最低限の演技は出来ていたので、文句はなかったのだがーーーー。


カメラと音声と照明のスタッフが、それぞれ意見をぶつけていた。


「おい! そっちを向いていたら顔が映らないぞ!」


カメラマンから激が飛ぶ!


「その位置だと照明が当たらないよ!」


照明スタッフから激が飛ぶ!


「俯いていたら台詞が拾えないだろ!」


音声スタッフから激が飛ぶ!


新人女優は、困惑していた…………。


一遍に、それぞれのスタッフから好き勝手な事を言われて、どうして良いのか分からなくなったのだろう。


演出上の動きは決まっているので、その範囲でそれぞれのスタッフに言われた事をやらなければならない。


これが、大手のプロダクションに所属している女優や売れている女優だったら、逆にスタッフの方が上手く撮れるように動いてくれるのだがーーーー。


弱小プロダクションで無名の新人女優だと、自分からカメラワークを探り、照明の当たる位置に入り、台詞も音声に拾って貰えるように言わなければならない。


はじめのうちは、演出で付けられた動きなどの段取りを覚えるだけでも大変なのに…………。


更に、メイクや衣装のスタッフからも注文が入った。


新人女優は、プチパニックを起こしていた。


完璧だった台詞もトチるようになるし、テンパり過ぎてNGを連発する羽目になっていた。


それでも、NGを重ねる新人女優にスタッフ達の怒号の嵐が止む事はなかった!


遂に新人女優は、泣き出してしまった。


付き添いのマネージャーも謝り倒していた。


愛子は、一旦撮影を止めた!


そして、新人女優に少し休息を与える事にした。


暫くして休息から新人女優が、戻って来たので撮影を再開した。


しかし、結果は同じだった…………。


完全に萎縮してしまい、演技にも支障を来たしていた。


泣き過ぎてメイクでは隠せない程に、目も腫れぼったくなり、声も枯れていた。


マネージャーと相談した結果、彼女は降板する事になった。


ここまで来ると第三者からは、もはや新人をイジメて楽しんでいるようにしか見えなかった。


何だ!? このイジメ体質の業界は?


こうやって新人が潰されていくのか…………。


愛子は、憤りを感じ古傷が少し痛んだ!


そして、新人女優をイジメたスタッフ全員に、魔術の印を結び呪文を唱えた!


「堊・丱・彌・穭・沮・霊・萵・娜…………」


すると、始めにカメラマンが腹痛を訴えた。


続いて、照明と音声のスタッフが同時に嘔吐をした。


そして、次々に新人女優をイジメたスタッフ達は、腹痛と嘔吐を繰り返した。


流石に同じ撮影現場で、この人数がこの症状だとロケ弁による集団食中毒を疑われたがーーーー。


やはり、原因は不明。


撮影が、まだまだ残っていた為、スタッフ全員の総取り替えは厳しいので、暫く苦しませた後に愛子は魔術の印を渋々解く事にした。

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