第10話 ヒーロー登場

俺は力尽き、気を失った。


しばらくして目を覚ます。


いったいどれくらい経っただろう・・・。


ユキは気絶している。


視界がぼやけている・・・。


これはユキと共有している視界ではない。


ユキのめくれ上がったスカートから見える、俺自身の視界だ。


こちらを背にして必死に戦っている人影が見える。


って、戦っているのはティアノじゃないか!


俺はとっさに声をかける。


「ティアノ!無事か!」


「ええ、パンテオン様も無事で何より。

 勇者様は私めが、命を懸けて守りますゆえ!!!

 勇者様には指一本触れさせはせーーーーん!!!」


ガキーン!!!


ガキーン!!!


俺が気絶している間、ティアノは血まみれになりながらユキを守ってくれていたのだ!


しかし、ホブゴブリンたちがティアノに一斉に切りかかった!


「死ねーーーー!!!」


スパッ!!!


ティアノは仁王立ちで敵の刃から俺たちを守った!


ティアノはホブゴブリンたちに斬られ、大の字のまま、後ろに倒れた。


白目をむいている・・・。


「ティアノーーーーー!!!」


俺は涙でパンティを濡らした。


(ゴブリンキングとの戦闘で、レベルが15上がりました。

 レベル50に達したため、腕が4本まで使用可能になりました。)


なんだと!?


ティアノ!


お前が紡いだこの時間、無駄にはしないぞ!


俺は心の中でティアノに別れを告げ、ユキをたたき起こす。


「ユキ、起きろ!ユキーーー!!!」


「ん、んん・・・、痛い・・・。

 でも、頑張る・・・!」


ユキは全身むち打ち状態だろう。


俺は気絶していた間にある程度体力を回復できた。


腕も4本だ。


今ならゴブリンキングにも勝てる確信があった。


なぜなら、腕が4本あれば攻撃と防御を同時に行えるからだ。


ゴブリンキングが俺とユキの復活に気付くと、口を開いた。


「まだやるか?

 もう俺は十分なんだがな・・・。

 まあ、死にたいなら殺してやるぞ。」


「ふん、せいぜい余裕をかましているがいい!」


すると、ゴブリンキングは再び立ち上がり、戦闘態勢に入った。


ゴブリンキングが同じようにパンチを繰り出してきた!


俺はそのパンチを、3本の腕で受け止めた!


「ぐぬう・・・やるな!」


ゴブリンキングは自慢のパンチが受け止められたことに驚く。


そして、残りの1本の腕でゴブリンキングの顔面にパンティパンチを入れた!


「ぐぬわああ!!!」


ゴブリンキングの歯が折れた。


「貴様、やってくれるではないか!」


今度は蹴りが飛んできた!


俺は4本の腕で大ジャンプをした。


2本の腕のジャンプよりも高い位置へのジャンプだ。


そうすることで、ゴブリンキングの蹴りの風圧が俺たちには届かない。


宙に浮いたまま、俺はゴブリンキングの顔面に連続パンティパンチをお見舞いした!


ドガドガドガドガドガ、ドガーン!!!


「ぐぬぬぬぬわああああああ!!!!」


パンティパンチがゴブリンキングの目、鼻、口、頭、あらゆるところにクリーンヒット。


ゴブリンキングは後ろに倒れこんだ。


そして、その勢いで玉座とツリーハウスの床ごとぶっ壊して、木の下まで落ちていった。


その衝撃でゴブリンキングは気絶してしまった。


「ようやくやったな、ユキ!

 しかし、ティアノは俺たちをかばって死んでしまった・・・。」


すると、かすかに声がする。


「勝手に・・・死んだことに・・・しないで下され・・・。

 私は・・・生きてい・・・ます。」


ティアノは全身を骨折していて、出血もかなりある。


ひどい重症だった。


俺たちはホブゴブリンを脅して応急キットを用意させた。


ホブゴブリンは親分を倒されたからか、従順だった。


そうして治療をし、ティアノは一命をとりとめた。


しかし、もう2度と現場に復帰することは叶わないだろう。


それからしばらく経った。


ゴブリンキングが目を覚ました。


「お、俺はいったい・・・。

 はっ!

 勇者の野郎に負けたんだ!!!

 あいつらはどこにいやがる!」


「ここだ、ゴブリンキング。

 まだやりあおうってか?」


「いや、やりあわねえよ。

 俺の負けだ。

 戦いを吹っ掛けてすまねえ。

 この通りだ。」


ゴブリンキングはそう言うと、頭を下げた。


と、思ったその瞬間!


強烈なパンチを繰り出してきた!


「貴様!」


俺はこの手を予想していた。


なぜなら、ゴブリンの村でも、酒場でも、2度騙された。


2度あることは3度あるだろう?


俺はこの攻撃を予測していたため、冷静にかわし、みぞおちと顔面にパンティパンチを食らわせた。


「ぐふっ!!!!」


「この卑怯者め!

 ゴブリンが卑怯で狡猾でずる賢いってのは嫌というほど思い知らされてるんでね。

 だいたい、さっきの戦いだって、『これは争いじゃない、競技だ』とか言っておいて、殺す気満々だったじゃねえか。

 鼻っからウソにまみれているんだよ、貴様は!」


ゴブリンキングは先刻の疲労もあり、本当にもう動けない様子だ。


「参った!本当に参った!

 お願いだから、命だけは助けてくれえ!」


「では、質問に答えろ!

 なぜお前たちは人間の街を襲った?」


「俺の息子が、人間の街に近付いたんだ。

 そうしたら、片腕をちょん切られて帰ってきた。

 人間の仕業に違いないだろ?

 それで魔王様に誓ったんだ!

 人間に復讐するって。

 そしたら、俺をゴブリンキングに昇格させてくれた。

 それで、人間の街を襲ったってワケだ。

 本当だ!信じてくれ!」


もしかして、その子供って・・・俺が転生したての頃に出会ったゴブリンかもしれん。


そのゴブリンは俺に触れたせいで片腕を失っている・・・。


そうか・・・俺のせいだったか・・・。


「その子供、俺のせいかもしれん。

 そいつが俺の結界に誤って触れちまった。

 それで片腕がもげたんだ。」


「なに!?人間のせいではなかったと・・・?

 今すぐ俺の息子を呼んで来い!」


すると、すぐにゴブリンの子どもがやってきた。


「おい、その腕を無くした時の状況を詳しく聞かせろ。」


「ぎゃあぎゃあぎゃぎゃぎゃあああ!」


ゴブリンジュニアは何やらパパに訴えている様子。


「ふむふむ。人間のえっちな下着があったから盗もうとした。

 それでパンティに触れたら腕がもげた、と・・・。

 本当に、人間のせいではなかったのだな。」


ゴブリンキングは肩をガックシと落とした。


「わざとでないとはいえ、悪かったな。

 俺のせいだったようだ。」


俺は素直に謝った。


このゴブリンの子どもには本当に申し訳ないと思っている。


「いや、もういい。

 俺はお前に負けた。

 結果的には復讐に失敗したってワケだ。

 俺のことは煮るなり焼くなり好きにしろ。」


「いや。この事件は俺のせいでもある。

 もう人間に悪さをしないならば、お前は生かしておこう。

 ただし!人間に悪さを働けば、俺はお前の命を取りに戻ってくると思え。」


俺はゴブリンキングがこれ以上人間に危害を加えないようにくぎを刺した。


「ああ。人間が俺たちに危害を加えない限り、俺たちは何もしない。誓おう。」


こうして、俺たちはゴブリンキングの調査を終えたのだった。



<作者あとがき>


次回、新メンバーキャラ登場!


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転生したら美少女勇者のパンティだった件 無限労働地獄 @mugenroudou

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