第32話

目の中の水分調節がうまくできなくなる病気で、


眼圧という 眼球にかかる内圧が上がります。



一定の高さを超えると、目や頭が痛くなったり、吐き気がしたりする発作が起きます』



春休み中、部活を3日間も休んだのも、その発作のためだ。



『薬を飲んで、眼圧が上がらないようにしていますが、


健康な人のような値まで下げることはできていません。



病院の先生からは、格闘技や空中戦の球技、水泳の飛び込みやクイックターン等をしないように言われています。



首から上に強い衝撃を受けると、


眼球破裂を起こして、失明する危険があるからだそうです』




この病気は、


中学生になってから発病したもの。



お年寄りの患者さんが多いらしくて、


それ単独なら 治療成績はまずまずらしいんだけど、



あたしのは 生まれた時から持ってた病気の合併症だから、


将来的な経過は 先生も何とも言えないんだって。



ただ、放っておいたら失明することは確からしい。



視力が残っている限りは、


この病気とも薬とも 一生の付き合いになるから、


上手に付き合っていく方法を考えようって言われてる。




さて、言わなきゃいけないことは


こんなもんかな?



『いろいろ難しい話をしてしまいましたが、


誤解される前に

みんなに知っててほしかったので、


この場を借りて言わせてもらいました。




できないことばかり申し出ちゃったけど、



でもあたしは、


出来るだけみんなと同じことを みんなと同じ条件で

みんなと一緒にやりたいし、


仲間に入りたい。



みんなと仲良くなりたいって思っています。



よろしくお願いします!』




大きくお辞儀をして、席に座る。






静寂に支配された教室。







ヤバい…。



ドン引きさせちゃった…?




でも、ここで言わなかったら、そのままズルズル行っちゃいそうだったし…。




でも どうしよう。

この雰囲気…。








その時だった。




パチパチパチパチ




前の方から、一人分の


でも 力強い拍手。




「川島さん、すごいよ。



勇気あるよ」




江崎君…⁉




「それと……」



意外な人からの拍手に呆然としていると、



江崎君は更に続けた。



「おとといは、その…、


失礼なこと言ってごめん!

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