第30話

近づいてくるその人の姿を凝視した。



うわ…。細っっ!



足も長い!



モデルみたいな体型だ。




かたん



彼女が席に着き、

その首から上がようやくあたしの視野に入った。



肩より少し長いくらいのミディアムヘア。



ピンと伸びた背筋。



顔は見えないけど、

さっきの男子達の反応から察するに かなりの美人。



それに、何て言うんだろう…。


身のこなしっていうのかな、


ひとつひとつの動きが颯爽としてて、何とも絵になるんだ。




あたし達と同じ制服を着てるはずなのに、凛々しさが全然違う。



あまりよく見えてないあたしが感じるんだから、


他のみんなはもっと強く、彼女の洗練された雰囲気を感じているはず。




思わず見とれていると、


彼女が急にこちらへ顔を向けた。




『あ…』



顔をそらすこともできずに、あたしは小さく声をあげた。




次の瞬間。




「フフッ」




彼女が小さく鼻で笑うのを、あたしは聞き逃さなかった。




何…?



なんか、


なんか すっっっごい失礼じゃない⁉⁉⁉⁉












「では、名前を呼ばれた人は返事をして、自己アピールをすること。



はい、安藤亮太」



出席番号1番の男子が指名され、話し始めた。




あたしはまだ、

さっき木原さんが鼻で笑ったのを気にしていたけど、



あわてて自己アピールで言うことを整理すべく、頭をめぐらせた。



1年の時のクラスも出身の小学校も違って 話したことのない人も結構いるから、


やっぱり 体のことはきちんと説明しておかなきゃいけない。




でも、いじめに怯えて小さくなってた去年までとは違う。



好きなことは好き、


得意なことは得意って言っていいんだから…!




「江崎 圭です」



あ…! おとといの…!




「ピアニスト志望です。



よろしくお願いします」



ピアニストとか、堂々とみんなの前で宣言できちゃうんだ。



なんか、すごいな。



「はい次、川島美奏」



『は、はい!』




あわてて立ち上がる。




『川島美奏です。


音楽が大好きで、合唱部で伴奏者をしています。



それと…』



あたしはそこでいったん言葉を切った。



うまくまとめられるかな…。




『あたしは…、

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