ふたつの風

第29話

キーンコーンカーンコーン



朝のホームルーム開始のチャイムが鳴り響く。



でも、みんな そんなの聞こえなかったような調子でワイワイ騒いでる。



そういうあたしも、さゆと絵里と共に騒ぎ中。




澄歌の入学式も昨日無事に終わり、


今日から本格的にクラスでの活動が始まる。





「こらー!


いつまで騒いどんじゃ⁉


席に着けー‼」



先生の声に、慌てて席に戻る。



「はい、報告と連絡がいくつかあるから ちゃんと聞くように」



担任は、美術の井上先生。



1年の頃からお世話になってる 大好きな先生だ。



サバサバしてて何事も豪快だけど、


真っ直ぐで、人を平等な目で見れる人だと思う。



あたしは去年、

この先生にめちゃくちゃ助けられた。




あ、ちなみにこの先生、



ショートカットだし、言葉も男みたいだけど、


れっきとした女性です(笑)。











「今日はまず 転校生を紹介する」



ざわざわ



いったん静かになった教室が再びざわめいた。



「こら! 静かに!



入っといで」




入口から聞こえる足音。



「うぉ!」


「ヒュー!」



男子達が野獣(⁉)のおたけびをあげる。




女の子・・・?




あたしは始業式の日に確保した一番後ろの席に座ってるから、その姿は見えないけど、


だいたいこんな反応が出る時は女の子って相場が決まってるよね。




カッカッ



名前を板書する音が響く。




「木原京華です。


よろしくお願いします」




はきはきした口調。



高くはないけど、通りの良い声。



うちの部のメゾに欲しいな(笑)。



「4年生まで南小学校にいたから 知ってる人もいるだろう。


一日も早く学校に慣れてもらえるよう、みんなも彼女に協力してやってほしい。



午前中はロングホームルームだし、せっかくだから


出席をとりながら一人ずつ自己紹介をしてもらうことにしよう。



席は・・・」




少しの間があって。



「美奏の隣が空いてるな」




⁉‼‼⁉




確かに、


あたしの右隣、


廊下側の一番後ろは空席だった。



「じゃ、とりあえずあそこの席に座って」



「はい」



わ、どうしよ・・・。



なんか緊張する・・・。

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