第26話
「何それー⁉
別に 今が楽しきゃそれでいいじゃん⁉
中学生でそこまで将来決めてる人なんてほとんどいないって‼」
その夜。
あたしは夕食の席で、音楽室での出来事を澄歌と話していた。
「お前、脳天気だなぁ・・・。
つぅか それ以前に中学入ってねぇじゃんか⁉」
澄歌の言葉に、お兄ちゃんが思いっきり突っ込んだ。
でも、そのお兄ちゃんだって、将来の目標なんて まだピンとこない様子。
「明日 入学式なんだから、もう入ったようなもんじゃん。
将来なんて まだまだ先なんだし、望んだところで自分の希望の仕事ができる保証なんてないんだから
大学行ってから考えたって、たいして変わんないんじゃない?」
うーん・・・。
ドライっていうか、何というか・・・💧
「澄歌・・・。
いくつだよ・・・お前💧」
お兄ちゃんの一言が あたしの今の気持ちを代弁していた。
「あたし?
ピチピチの12歳♥」
なんか、頭痛くなってきた💧
でも、澄歌の言うことも当たっているのかもしれない。
だって、今の世の中には、
希望の職につけない人や定職が決まらない人がたくさんいて・・・。
そういうことを考えると、なんか努力とかしてもバカらしいのかなって思ってしまう。
でも、あたしはお兄ちゃんや澄歌みたいに自由には、職業を選べない。
大学や高校だって、受け入れてもらうには健常者のようなわけにはいかない。
普通のアルバイトもできないだろうし・・・。
あたしみたいに視覚に障害を持った人は、
マッサージや鍼灸の免許を取って働くのが一般的らしい。
何も考えずにそんな決められたレールの上を歩くのは嫌。
だけど、何ができるのか、
何を望めばいいのかわからない・・・。
なんか・・・、動揺してるのかな、あたし・・・。
「3人とも ちょっといいか?」
ずっと黙ってあたし達の話を聞いていたお父さんが口を挟んだ。
「若いうちから将来を決定しろとは言わないが、
父さんはお前たちには 何らかの志を持って大学なり専門学校なりに行ってほしいと思っているよ」
お父さんの言葉にはいつも、
穏やかな中にも揺るぎない信念を感じる。
反論やツッコミの多い澄歌も、お父さんの次の言葉を黙って待った。
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