大学生

@uni2222222

大学生

 ただ緩やかに死んでいく。寧ろ、すでに死んでいる。細胞を殺し続けるためだけの日々。しかし、その死から得るものは何もない。私は決心した。こんな日々を変えよう。そうして思い立った。コンビニに行こう、アイスを買いに。アパートを出た。深夜二時半を回り、自販機と外灯のLEDだけが光っていた。最短でコンビニに行くために、目の前にある駐車場を横切る。駐車場の後方は人が通れるように、ある部分だけフェンスが設置されていない。そこを通って道に出た。少し歩くと、私が向かう突き当りにゴミ袋を持った女がコンビニとは逆方向へ歩いているのに気付いた。キャップを深々と被り、不織布のマスクを着けている。そして、膝上数十センチはあるハーフパンツを履いていた。一瞬その太ももに目をやり、その女を何気なく眺めながら歩いた。少し眺めているとあちらもこちらに気付き、数秒こちらを見た。女が建物で見えなくなった。私は女の進行方向とは逆方向へ曲る。深夜のコンビニが見えた。自動ドアが開くと、いつものメロディーが流れた。「いらっしゃいませ」私はアイスの売り場に向かい、吟味した。いつも金欠な私に二百円以上のアイスを買う余裕はない。数分アイス売り場で立ち往生していると、向かいの誰かが視界に入った。さっきの女だった。全く同じタイミングでアイスを買いに来るとは驚きだ。運命すら感じる。私は再びアイスに目を落とし、一つ手に取った。「ありがとうございました」会計を済ませ、店を出た。アパートの部屋に戻り、椅子に座った。そして、金欠の自分には嗜好品であるアイスを味わった。小さな幸せで少し満足する。その後はスマホを構い始めた。音楽を聴いて、私はくすぶっている主人公だと錯覚する。私は焦燥と虚無感を愛してやまない。何物でもない自分を愛してやまない。この無意味が好きなのだ。でも、多分気付いた時にはもう遅い。無意味は無意味だったと。動かねば。このまま死ぬわけにはいかない。しかし、こんな無意味な文を書いていたら時計は4時を回っていた。明日の太陽は私を追って昇るだろう。私が東から西へ動くとき、太陽も東から西へ動くだろう。太陽は私のためだけに昇るだろう。日向こそが私のいるべき場所なのだ。そうして、私は泥のようにベッドに溶け込んだ。憂鬱である。

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