第198話

「波流ちゃんは将来何になりたい?」








長椅子の背もたれに背を預けた裕は空を見上げる

それにあたしも釣られて空を見る









ひときわ大きな雲が目に入って

その雲を目で追って行くと

じわじわと太陽を隠していった







今日の天気予報では晴れマークだったのに

雨・・・降るのかな



















「あたしは将来の夢なんか考えたことないよ」






「そうなの?」









隣で素っ頓狂な声が聞こえた






うんとだけ小さく返した

あたしにはやらなきゃだめなことがあるから

それはあたしにしか出来ないから



夢なんて何も考えたこと無かった







「じゃあ

幼稚園の先生とかカフェの店員さんとかどうかな





いや、でも

なんでも似合いそうだなぁ〜」





あたしの代わりに夢について想像してくれる

すごく楽しそうに話してたから


ちょっとあたしも想像してみた













・・・うん






小さい子どもとあたし





ケーキとあたし






アンバランスじゃないか?

まだ、バランス取れると思うの

いかつい兄ちゃんか、焼肉ぐらいだよ












「そんな女の子っぽいのは似合わないよ」






心の底からそう思う




どう頑張っても男勝りなのは治らないのに

治すつもりもないけどさ







自然と笑いが込み上げた







「そんなことないよ

十分女の子なんだから」







魅力いっぱいだよ?

さらっとこういうことを言う




その姿はまさに




「紳士だね」










「褒めてるの?」









「褒めてるよ」




何気ない会話をしながら

2人してずっと空を見上げていたけど

ときどきチラッと横目で見て


いつもの調子で笑ってるのに

でもどこか悲しそうな顔をしてたのは見逃さなかった

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