第33話

優芽は燈馬の腕の中で幸せを感じていた。

もうこの腕を解くことが出来ない。


「私が何を言っても、燈馬先生は受け止めてくれますか。あなたを傷つけるかもしれません。


私は普通の幸せは望んではいけないんです。」


燈馬は優芽を強く抱きしめた。


「怖がらないで。何を言われても傷つかないよ。君を失う事に比べれば。


傍にいてくれるなら、僕はそれでいい。」


燈馬の声が優芽の心を暖かくしている。

優芽は迷いはじめていた。


「どうすれば良いの。わからないんです。私は何をするべきなのでしょうか。」


「落ち着いて。大丈夫だよ。今はゆっくり休もう。明日長内さんが君と僕に話があると言っていたよ。


長内さんの話を聞いてから、これからの事を2人で話そう。」


「琥珀さんが?そうですか。燈馬先生はこんな所にいて大丈夫ですか?茉白さんの治療があるのに。」


「大丈夫。茉白も僕らの味方だから。治療はちゃんと引き継いできたよ。優芽さんは何も心配しないで今は甘えて。」


優芽は顔を燈馬の胸に埋めた。


「燈馬先生。ありがとうございます。私の為にこんな所まで来てくれて嬉しいです。」


燈馬は優芽の頭を撫でた。


「僕が会いたかったから。今日は2人でゆっくりしよう。ここは綺麗な場所だね。散歩しよう」


燈馬は優芽の手をとって歩き始めた。

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