NO.3

第7話

燈馬は優芽を見つめた。着物を着ている優芽はいつもより大人びていてとても綺麗だった。


「今日は着物なんだね。似合ってるね。」


優芽は燈馬が見れなかった。スーツ姿の燈馬は優芽には眩しすぎる。


「先生もスーツなんですね。お似合いです。」


二人の間に流れる不思議な空気に燈馬も優芽も戸惑っていた。


「じゃあタクシー拾うね。家まで送るよ。」


「すみません。ありがとうございます。」


在り来りの会話をしながら、二人はお互いを意識していた。


燈馬は自分が酒に酔っているせいだと思いたかった。優芽に触れたいなんて。自分の感情に驚いていた。


優芽も燈馬の側にいるだけで、胸が苦しくなる自分がもどかしかった


「今日は誰と会食だったの?家元としての仕事なんだね。優芽さんは若いのに凄いね。」


燈馬に褒められて優芽は恥ずかしかった。


「凄いだなんて。いつも誰かに助けて頂いて、一人では何も出来ませんから。もっと成長したいです。」


優芽の手首を優しく握る。


「無理だけはしないでね。もっと自分を大切にして。君はちゃんと頑張ってるよ。」


優芽は燈馬の手が熱くて目眩がした。これ以上触れられたら。そう思った瞬間、燈馬が手を離した。


「タクシー来たよ。じゃあ行こうか。」


優芽は目を伏せて息を整えた。


「はい。ありがとうございます。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る