第32話

~菜穂side~


「竜介くん?」


私たちの席に黒髪の美女がやって来た。


しかも、竜ちゃんの名前を呼んで。


「あっ…」


この人、こないだ竜ちゃんと歩いてた人。


心臓の音が聞こえそうなぐらい焦る。


「飛鳥さん」


竜ちゃんが下の名前で女の人の事を呼んだりしない。

それは私だけが特別だった。

これで確信した。


この人が竜ちゃんの好きな人…。


「えっと、竜介くんの友達?」


「あ、はい。

幼なじみの菜穂と…」


竜ちゃんは私と工藤くんの紹介で、

工藤くんの事を何て言っていいか考えてる。


「竜介の友達で、彼女はよく行く店の店員で、

今日は彼女のバイト先でたまたまあって、この流れ」


上手い!工藤くん、上手い!!

拍手してあげたいけど出来ないから頭でやったおくよ。

いつのまにか眼鏡と帽子かぶってるけど。

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