第31話

花咲が離れると、幼なじみの表情と声のトーンが変わった。


「なんで、菜穂なの?」


「…」


「アイドルの君なら、もっと同じような立場の人とかいるんじゃないの?」


「初めてなんです。こんなに自分の思い通りにならない事。

全くも見向きもしないし、純粋で一途で、真っ直ぐで俺の周りにはいない。


めっちゃ毒吐いてきますけど」


「何となく毒吐くのは想像つく。

本気なんだなー

だったら、俺は応援するよ」


「あの、幼なじみさんは…」


「あ、今更だけど俺、多治竜介。

好きに呼んで。同い年なんだし」


「竜介は、菜穂の事どう思ってんの?」


「俺?俺はー…大切な家族かな?

妹みたいに想ってる」


「そっか」


何事もなかったような顔をしたけど、

正直安心した。

万が一、竜介が花咲を好きだったら、

絶対勝ち目ないじゃん。


「何2人で話してたの?」


花咲が戻ってきて俺たち2人を交互に見る。


「何もー」


俺の方をじっと睨んでくるけど、気にせずコーラを飲む。


「竜介くん?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る