第32話

「待った」


「柊くん?えっ!?」


紬の手を引く千秋の顔色は真っ青で、いつもの余裕そうな顔はどこにもない。


「…もしかしなくても、柊くんってお化け屋敷無理でしょ?」


「…秘密にしてください


あー…情けねー…」


千秋は繋いでない左手で口元を抑える。


「良いと思う!そういう所があるの!」


紬は千秋の口元にある手を外して繋ぐ。


「可愛い!」


「…可愛いはちょっと」


「え?だって可愛いよ」


悪意のない紬の言葉に千秋は、渋って受け入れた。


「他の行こう!何がいい?」


「…お化け屋敷以外ならなんでも」


「うん、じゃあ…あのジェットコースターはどう?」


「ジェットコースターなら大丈夫」


楽しそうに前を歩く紬の顔を見て千秋は微笑みながら返事をした。


程々に遊び尽くし、夕方になると2人で観覧車に乗り込む。


「ここ好きな音楽が流れるんだって、何か聞きたいのある?」


「うーん、最近のはあまり聞いてないから柊くんに任せるよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る