第33話

不器用で、でもとても優しい人。

それは凄くわかったから。


「だから、謝らないでください」


「…ん、わかった」


百瀬さんは、私の頭をクシャッと撫でながら子供っぽく笑う。


「ちょっ…」


頭をクシャッてやられた事に対して止めてって言おと思ったけれど、その顔を見たら何も言えなくなった。


お化け屋敷を抜けるまで百瀬さんの手を握っていた私。そろそろ離そうとした瞬間、ギュッと握られる。


「ハグれたら困るからこのままで良くね?」


「はい…」


ドクンッと胸が鳴った気がした。

久しぶりのこの感じ…


でもきっとこれは恋とかじゃない。


百瀬さんが、光輝に似てるからそうなるだけ…



「何か飯くわね?」


「はい、どこか…

って結構混んでいますね」


「土曜だからな」


休みに久しぶりに遊んで動いたから、自然とお昼にお腹が空いている自分がいた。


グー…

とても恥ずかしい音が鳴って、顔を赤くする。

百瀬さんは無言のまま私を見て、静かに笑う。


「すみません…」


「いや、全然いいよ。何食いたい?」


「えっと…ハンバーガーが食べたいです」


「じゃあ並ぶか。ハンバーガーだったら外のベンチでもいいしな」


ハンバーガー屋の行列に並ぶと店員さんからメニュー表を渡される。


「何にするかなー」


「私、エビアボカドがいいです」


「お、美味そうー

俺もそれにすっかなー」

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