第32話

「半分って…」


この人、本当にどういうつもりでこんな事するんだろう。なんでこんなに構うんだろ…?


「でもよ、少しは大声出してスッキリしたんじゃねーの?」


「え?まぁ、それなりに…」


「じゃあ!他のも乗らないとな」


私の右手を引いて百瀬さんは歩き始める。


「ちょっ!?

ホントにあの大きいの絶対無理ですからね!

聞いてます!?」


私は焦って、遊園地内で1番大きいジェットコースターを指さすが、百瀬さんはその手を見ずに「わーった、わーった」と言っていた。


絶対にわかってない。

それだけは自信を持って言える。


「じゃあこれは?」


連れてこられた場所は、ほとんどの人が苦手だと思うお化け屋敷。


「あの、1ついいですか?」


「ん?」


「ジェットコースターも苦手だと言っている人間がこれ入れると思いますか?」


「意外と得意かなーと」


「無理、無理です…」


私が止めても、彼に腕を引かれお化け屋敷の中に入っていく。


「あの、腕…少し痛いです」


「あぁ、悪い」


ゆっくりと引かれていた腕が離される。それと同時に私の横から女の人の幽霊が現れる。


「きゃー!無理、無理ですー」


「ほらっ」


私の手を引いてくれた百瀬さん。


「悪かったな…俺、調子乗った。

悪い」


珍しく申し訳なさそうに恐る恐る謝る百瀬さん。私は引かれた手をそのまま握る。


「…いえ。私を元気づけようとしてここに連れてきてくれたのはわかってるので」

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