第31話

「あの、確かに外出は全然していなかったんですけど…何でここなんですか!?」


百瀬さんに連れて来られた場所は遊園地。

そして、今まさに半ば強制的に乗せられたジェットコースター。


「いや、外出してなかったって事だし外の空気吸ったり叫んだり必要かと」


「そんなのいらないです!というか苦手だって聞いてませんでしたか!?」


「そうだったか?あ、ほら下から手を振ってる」


「見る余裕ないです!!」


百瀬さんはジェットコースターは得意なのか、私が怖がっているのをよそに1人楽しんでる。

頂上に来た時、本当にもうダメだと思った。


「き…きゃあー!!!」


乗り終えてすぐベンチに腰を下ろす。


「もう終わりか?」


「いきなりあんなのに乗せないでください!」


「弱いな」


「人間得意なものと苦手なものあるので!」


「ったく。何か飲むか?」


「えっと、じゃあ…お茶を」


百瀬さんはズボンのポケットに手を突っ込みながら歩いて正面にある自動販売機に向かっていく。


私はハンカチを口に当てて彼を待つ。

しばらくすると百瀬さんが戻ってきた。


「ほら」


「ありがとうございます…」


差し出されたペットボトルのお茶を受け取り、口に入れる。


「はぁ…美味しい」


「普通のお茶だけどな」


百瀬さんは笑いながら私の横に座る。


「ホントにさっきはヤバかったんですよ」


「悪かったって」


「本当にそう思ってますか?」


「…半分ぐらいな」

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