第26話

店の外に出ると彼はすぐに伸びをし、欠伸をする。

余程退屈だったんだろう。


「あの、ありがとうございます」


「あ?何が??」


「あの場から連れ出してくれて」


「何を勘違いしてんのか知らねーけど。あの場から1人で抜けるのは気まずかっただけだ」


「えっ!?」


自分の為にしてくれたのだと勝手に勘違いした挙句、お礼まで無駄に言ってしまって…

すごく損した気分。


私はその場に立ち尽くしていたら彼は振り向いて私を呼ぶ。人の気も知らないで…


「おい、何食べたい?」


「え?流石に食べ物は…さっき食べたし」


「はぁ!?胃袋ちっせーな」


「なっ!男の胃袋と一緒にしないでください!」


少しカチンときた私は思わず年上の彼に刃向かってしまった。

文句を言った後に、やばい!と思い口を手で塞ぐ。


「あの…すみません…つい」


怒られる!絶対キレる…

私はそう確信した瞬間、目を閉じる。


「ぷっ、あははは…

あんた面白いなー」


「へっ?」


想像とは真反対の態度に拍子抜けし、情けない力のない声が出た。


「この俺に言い返すとか中々やるじゃねーか。

気に入った」


この怖い顔の人が思いっきり笑った瞬間、とても可愛いと思った、ギャップにハマったのは私の方だったのかもしれない。


その後、連絡先を交換して会える日には会ってデートして何気ない日々を過ごしてたら、柄にもなく「付き合おう」って照れくさそうに言ってくれたっけ。


私は光輝と一緒にいられる事が幸せだった。

それ以上何も望まなかった。

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