第3話
…いや。今は敢えて考えずにおこう。
君を忘れるための旅行なのだから。
私はいぶかしげな顔をした売り子のねーさんに、
大至急10万円を執事に用意させ、きっちり250万円耳をそろえて支払った。
私は売り子のねーさんの顔をまともに見れなかった。
240万円だと思ってそれしか財布に入れてなかったこと。
あの、金を払えないのか?と不憫と言いたげな哀れみを宿した白い目が…
恥ずかしかったのだ。
昔負ったトラウマを思い出す。
私は生まれた時からセレブであったが小学校から高校まで市立に通っていた。
色んな人間が集まるのが学校であるが、
その中でも私は段違いな金持ちとして学校の中で嫌な注目を浴びていた。
顔は、普通。
性格は、普通。
なのに降ってくる視線。
『庶民の生活を理解せよ』
それがくだらない教育方針。
なぜ父親は金持ちが集まる私立学校に入れてくれなかったのか。
そうしたら多数が蠢く教室という場所で、
一人ではないのに独りを感じることもなかったはずなのに。
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