第四章 婚約者候補③アレン

第32話

「カルティナ」


「はい。何でしょうか?お父様」

  

 その日の夜、帰ってきたお父様はわたしを見て嬉しそうに笑っていた。


「カルナくんとのデートは、どうだったんだ?」


 やっぱりお父様は、それを聞きたかったみたいだ。


「どうだったんだって、言われても……」


「何だ、楽しくなかったのか?」


 とお父様は聞いてきた。


「い、いえ、そんなことありません。 今日はカルナさんと一緒に、サーカスを見に行きました」


「サーカスか。それはいいな、楽しそうだ」


「楽しかったですよ。……なんだか昔のことを、思い出しました」


 そう伝えるとお父様は「昔のこと?」と不思議そうに聞いてくる。


「はい。お父様とお母様と見に行ったサーカスを思い出して、懐かしくなりました」


「サーカスか。……懐かしいな、本当に」


「はい」


 お父様だってきっと、お母様のことをまだ想っているはずだ。 お父様とお母様は、本当に仲が良くて、周りから見ても本当に仲良し夫婦だったから。


「カルティナ、くれぐれも相手方に失礼のないようにな」


「分かっています、お父様」


 もう、お父様ったら……。

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