第28話

それから3週間後、麗奈が教壇に立っている先の西浜学園高校の文化祭が行われ、麗奈が顧問の鉄道研究部の方も、銚子電鉄や鹿島臨海鉄道の写真が展示されていた。春樹は、開催日初日に、そこの文化祭を見に行くこととしていたので、文化祭の会場にまで足を運び、鉄道研究部の写真を見ていた。そんな中、西浜学園の廊下で、1人の女性とすれ違った。

「来てくれたの。」

と、麗奈が春樹に声をかけた。

「縁談のほうは?」

と、春樹が麗奈に聞くと、

「あ、この話。断ったよ。私、今の仕事が生きがいだから。前にも言ったでしょ。それに、私が結婚したら、春樹君さみしがると思ったから。」

と麗奈は答えた。

「私が担任をしている2年E組、今回の文化祭の出し物は焼きそば屋なんだよ。私のおごりだから。生徒達が作った焼きそば食べてよ。」

と、麗奈が担任をつとめるクラスの教室まで春樹を案内した。春樹が麗奈のおごりの焼きそばを食べていたら、そこの教室の中に1人の若い女の先生が入ってきて、焼きそばを買っていた。

「もしかしたら、彼女、三井秀美と違うか。」

と春樹が言うと、

「三井先生知ってるの?」

と麗奈が春樹に聞くと、

「オレ、知ってるよ。話はしたことないけど。彼女、プロボクサーなんだぜ。」

と、春樹が言うと、

「そう言えば、伊本先生から、その話は聞いたことある。私、あまり興味ないから詳しいことは知らないけど。そうらしいね。」

と麗奈は答えた。

「ヨオーッ!」

気がついたら、春樹の同僚の薫の奥さんのえりなの姿が。隣には、薫の姿もあった。

「オマエのことだから、多分、ここだろうと思ったよ。おもしろいところあるから行かないか。」

と薫が春樹を誘った。

「もしかしたら、1年生のクラスの空き缶の壁画のピカチュウだろ。」

と春樹が言うと、

「なんだ、知ってたか。もう見たん違うか。」

と、薫が言うと、

「見た。」

と、春樹が答えた。

「もう1回オレと一緒に行こうや。」

と、薫が春樹を誘うと、

「そうしよか。」

と、その誘いに乗った。薫先輩夫婦と春樹の3人は、空き缶の壁画が展示されている教室へと足を運んだ。そこにはプロボクサーの三井秀美の姿があった。

「これ、私のクラスの出し物なの。」

と、秀美が言うと、

「もしかしたら、クラスの中にポケモンの好きなヤツがいて、それを作ることになったんだろ。」

と春樹が聞くと、

「そんなところ。久本春樹君って、あなたよね。私の通っているジムに、たまに出稽古に来る吉見貴子は知っとるよね。いろいろとウワサ聞いているよ。1カ月前に、春樹君の卒業した高校の近くで偶然会ったことも知っている。以前、中学生だった彼女に告白したこともあるんだって。ここだけの話だけど、当時、高校生だった分際で、先々、一緒になろうなんて言ったとか言わなかったとか。だけど、ボクサーの中には、会って、まだあまりたっていないのに異性とくっついたりというケースもあるんだよね。私だってプロボクサー。気持ちは、わかるような気がする。もしかしたら、一発のパンチで死ぬかもしれないから。話聞いたら、吉見のやつ、やる気マンマンだよ。吉見に告白されているんだろ。交際を受ける受けないはともかく、明日の試合、応援に行ってあげなよ。」

と秀美は言って、その場をあとにした。帰りの電車では、たまたま貴子と同じ電車に乗ることとなった。前日計量は一発でパスしたとのことだった。

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