第27話
翌日、春樹は職場の保育園で、先輩の薫に昨日の出来事のことについて相談した。
「春樹。オマエの鉄道マニア仲間で、うちの女房の高校教師の同僚の赤松先生のこと好きなんだろ。来週、赤松先生とデートの約束しとるんだろ。」
と、薫が言うと、
「まあ、しとるけど。だけど、赤松先生の高校。吉見のイベントが行われる当日、文化祭なんだよな。知っとるだろ。薫先輩。」
と、春樹は答えた。
「そういえば聞いた。女房から。オレ、文化祭見に行くんだ。文化祭では、赤松先生が顧問の鉄道研究部の出し物もあるんだよな。ボクシングのイベントの前日も文化祭だから。」
と、笑いながら薫が春樹に聞くと、
「オレ、薫先輩の奥さんが働いている高校の文化祭。2日間あるうちの最初の日に行くつもり。ちなみに、来週、赤松先生と銚子に行く約束だから。実は、赤松先生の鉄道研究部の生徒の3人も一緒なんだぜ。」
と答えた。
「と、いうことは、デートじゃないってワケか。」
と、薫はボケて見せた。
「その通り。だけど、夕方には鎌倉に戻って来るから。帰って来てからの1時間くらいかな。デートは。」
と、春樹は照れながらボケ返した。
「じゃあ、デートは夕食のみか。」
と、薫が聞くと、
「多分そうなるね。」
と、春樹は答えた。
「とにかく、その吉見貴子とかいうボクサー娘に告白されているんだろ。オレから女房に頼んで、赤松先生のこといろいろと教えてやるから。がんばれよ。」
と、薫が言うと、
「ありがとうございます。」
と、春樹は礼を言った。薫も春樹の悩みに協力することとなった。
次の休日、春樹は麗奈たちと電車で銚子に行く約束となっていた。銚子へ向かう電車の中で、麗奈の赴任先の高校の鉄道研究部の生徒3人と同席することとなった。銚子へ向かう道中、3人の生徒の中のうちの1人で撮り鉄の渡田浩一が、中学生時代から『チャレンジ2万キロ』に挑戦しているとの話をしていた。休みになると、全国各地のローカル線を巡る旅もしているようだ。彼にとっては、銚子は中学時代に一度行ったことのある場所で、銚子電鉄の濡れせんべいが、今、全国各地で人気を集めていることも、既に知っていたのだった。その日の夕方、銚子から鎌倉に戻って、麗奈の高校の鉄道研究部の生徒達と別れて、春樹と麗奈は、駅の近くの喫茶店で夕食を食べることとなった。そこで、麗奈は、
「次の休みの日、うちの両親が私に縁談を持ち掛けたので、京都に戻ることになっているんだよ。」
と春樹に相談した。
「相手はどんな人。」
と、春樹が麗奈に聞くと、
「宇治市の市役所に勤務の人なんだけど、うちの両親には心配かけさせたくないし、そこで春樹君に相談に乗ってもらうことにしたんだよ。」
と言い出した。
「今後はどうするつもりなの。縁談は?」
と春樹は麗奈に聞いたら、
「私は、できれば、その縁談、断るつもりだよ。それを受けても、あっちで赴任先を探して、先生はするつもりだけど。だけど、今の生徒達のことを考えると、結婚するよりも仕事が生きがいと言った方がいいのかもしれない。結構、この仕事、やりがいあるんだよな。」
「今回はひょんなことから、銚子にも行くことができて、本当ラッキーだったよ。赤松先生と一緒に旅行ができるなんてマジ最高だったよ。」
と春樹は旅行のことについての感想を言った。
「赤松先生なんて、かしこまらなくてもいいから。麗奈さんでいいよ。同じ鉄道マニア仲間だし、これからまた、春樹君を鉄道旅行に誘う機会だってあるかもしれないから。」
と麗奈が言ったので、
「そうだよな。麗奈さん。」
と春樹は答えた。
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