第34話

「もちろんそんなものもないよ?でもね、」


「てか、悩みなんか聞いてどうするんですか?もしかして大人なら何でも解決できるとでも思ってます?無理なものだってありますよ?」


「うん、分かってるよ?」


大人の貫禄なのか、徐々にヒートアップする私に対して学年主任は特に言葉を荒げることもなく冷静に言葉を返した。


「エリカさん、落ち着いて?」


水口の言葉はどうでも良くて、私はその声を無視して真っ直ぐに学年主任を見つめ続けた。


「分かってるならどうしてそんな簡単に“悩みがあるなら相談して”なんて言うんですか?」


「何か力になれることもあるかもしれない」


「…へぇ。じゃあなかった場合はどうするんですか?」


「うん?」



うん?じゃねぇよ。


腹立つなぁ。


このクソジジイが。



「だから何もしてやれなかった時はどうするんですか?人の悩みを聞くだけ聞いて、それで終わりですか?」


「……」


「悩みを聞き出したい先生からすればそれを聞けてスッキリするのかもしれないですけど、私はその場合どうなるんですか?“助けてくれるかもしれない”って期待するだけ期待して、結局何もないんですよね?それって余計辛い思いするだけじゃないんですか?」


「……」



何黙ってんだよ。



「自分の悩みを人に話すのって簡単なことじゃないんですよ?」



「そうだね…。でもさ、君は悩みなんてないんじゃなかったの?」



学年主任は私の揚げ足を取るかのようにそう言うと、少しだけ満足げに私を見た。



気持ち悪い…



「あくまであればの話ですけど。あれ?私、ずっと仮定の話してたんですけど、分かってなかったんですか?」


「……」



調子乗んなよ、クソジジイ。

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