第30話

この人はきっと私とは全く違う世界を生きてきたんだろう。



こんなにも綺麗なんだもん。


私とは違う。



てか、英語好きはどこ行ったよ?

“どんな生徒にも寄り添って信頼し合える”って、それもう英語全く関係ないじゃん。


見ていて腹が立つほど綺麗なこの担任と私が同じ人間だなんて、世の中は不公平すぎるよね。




「もしかして教職の道に興味があるのっ!?」


「……」


「いいね…向いてるかもしれない…!!」



興味なんかないよ…


てか、向いてる“かも”って…



「ちなみに何の教科?エリカさんなら国語とか成績良いし、」


「ちょっと」


そうやって生徒を下の名前で呼ぶところも本当に腹が立つ。


距離の詰め方が雑で下手くそなんだよ。



話を遮った私に、水口はキョトンとした顔で私を見た。


「勝手に話進めないでよ。私別に教師になんかなりたくない」


「あ、そうなの?」


そうだよ。


私がいつなりたいって言ったのよ。



「向いてると思ったんだけどなぁ」



そう言いながら水口は、無意識だろうとは思うけれど少し膨らみ始めたお腹を優しくさすった。


綺麗な上に、この女は今幸せの絶頂なんだろう。


左手薬指の指輪がきらりと光った。



寸胴で手足の短いこんなちんちくりんでも、ちゃんとセックスするんだな。


旦那も旦那で、よくこんな女に勃つよね…




…って、それはさすがに失礼か。

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