第29話

ここは進学校だから、きっと水口も立場的に引くことはできないんだろう。



なんで私はこんな学校を選んじゃったんだろう。



「うーん…」



水口はどうしてもお母さんと三人で面談がしたいらしい。


そんな必死にならなくても、あんたもうすぐ産休じゃん。


放っとけばいいのに、あんな親を見た上でどうしてそんなに親身になろうとするのかな。



「ねぇ、先生ってさ、」


「うん?」


「どうして先生になろうと思ったの?」


私から話を振られたことが嬉しかったのか、水口は一気に目を輝かせて私を見上げた。


自分の机に向かって座る水口と、その横に立つ私。


立場的にもそれで何もおかしくはないんだろうけれど、私は何だかそれに少しムカついた。



私、たぶん水口のこと上だと思ってないんだな。



「英語が好きだからだよ!」


…そういえば英語の担当だっけ。


「あ、ごめん。質問間違えたわ」


「え?」


「どんな教師になりたいの?」


私がそう聞き直すと、水口はとびっきりの笑顔を私に向けた。


「どんな生徒にも寄り添って信頼し合えるような教師っ!」



模範解答。


百点。



気持ち悪っ…

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