第9話
「担任の先生が年明けから産休に入るんだって。だからみんなでお金出し合って何か贈るみたい」
「…あのちんちくりん、結婚してたんだ…」
「うん、去年の夏」
「…で、いくら?」
「…五、千円」
「……」
これは流石にバレるだろうか。
だってうちのクラスは四十人もいるし、一人五千円なんて一体産休に入る先生に何を贈るつもりだよって話だよね。
でも、きっと大丈夫。
この女は本当にバカだから。
それに、うちのクラスの生徒の人数なんてこの人は絶対に知らない。
「……ん」
…やっぱり。
お母さんは大嘘をついた私を特に怪しむ様子もなく、持っていたお札を一枚私に差し出した。
「ありがとう」
私がそう言ってその差し出されたお金を受け取ろうとお母さんの部屋に入ると、その部屋は十二月とは思えないほどモワッとしていて、それに煙草の煙が混ざって何とも言えない空気を作っていた。
乱れた布団の上に下着姿のままでいるお母さん。
その近くには使用済みのティッシュが一塊になって無造作に置かれていた。
それを気にせず差し出されたお金を受け取り確認すると、そこにあったのは一万円だった。
お母さんの手にあったこれは、さっきの男から貰ったお金で間違いない。
交尾合戦の代わりに得たお金…
私はそれに対して気持ち悪いなんて思わなかった。
お金はお金だし。
慣れとは恐ろしいものだ。
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