第8話
それからしばらくして、男が家を出て行く音がした。
私がそっと自分の部屋から出てみると、隣の部屋の戸が開いていた。
「…お母さん、」
「…あ?」
さっきまで交尾合戦が行われていたであろうその部屋で、下着姿のお母さんは煙草を吸いながら今貰ったであろうお金を数えていた。
十二月だというのに、寒くはないのか…
「いくら貰ったの?」
「あんたに関係ないでしょ」
関係ないって…
それならその交尾合戦の邪魔をしないようにと気を遣う私って一体何なんだろう。
「明日私、お金いるんだけど」
私がそう言うと、お母さんは煙草を口に咥えたままにこちらを見た。
お母さんの部屋の窓は開いていないのか、私から見えるお母さんの部屋は煙草のせいで霧がかかったみたいに白くなっていた。
まぁ、窓なんて開いているわけないか。
今は十二月だし、さっきまで交尾合戦…
てか我ながら“交尾合戦”って面白い名前つけたよね、私。
「何の金?」
思わず笑いそうになった私に、お母さんの低い声が聞こえた。
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