第31話
私は慌てて二人の左側に駆け寄った。
「ちょっ、あのっ、」
「お前死にたいんか、この若造が」
「死ぬのはお前だろうが。その汚ねぇ手を離せっつってんだよ」
私を助けてくれた男は歩き方同様今もどこかだるそうで、目の前ですごむスキンヘッドの男を顔色一つ変えずに真っ直ぐ見つめていた。
「っ、二人とも落ち着いてくださいよっ!!」
…と、言ってみたはいいものの、たぶん三人のうちで一番落ち着きがないのはこの私だ。
だってさ、家を出る時にはこんな展開想像もしてなかったんだもん。
ていうか私の人生全体を考えたって見た目で言えばこの人達はどっちも出てこないしさ。
ていうか私、彼氏にフラれた日の夜中の路地裏で何やってんだろう…
「とっ、とりあえずお兄さんっ、その手は離しましょう!!そもそも胸ぐらを掴むなんていきなりすぎやしませんか!?こういう時はまず話し合いでしょう!!」
…いや、いきなりどうこうの話じゃないのか?
「おい、離せ…お前殺すぞ」
「ちょっ、そっちのお兄さんもなに怖いこと言ってるんですか!?そういうことは思っても言っちゃダメなんですよ!?」
さっきからいちいち口を挟む私の言葉はどこか少しズレている気がした。
もう焦りすぎて自分でも何言ってんのかよく分かんないわ…
「…土下座するなら今のうちやで?」
「お前がしろよ、土下座。その情けねぇ頭地面に擦り付けて俺に謝れや」
「なんやと…?」
てか二人とも私の言ってること全然聞いてないし…!!
「っ、本当にやめてください!!悪いのは全部私じゃないですか!それなのに二人が揉めるとか意味分かんないでしょ!?」
二人は依然私の声には全く反応もせずに、お互いがお互いから目を逸らそうとはしなかった。
やっぱり改めて見たってスキンヘッドの人の方が一回りガタイが良い。
私が勝手に巻き込んだのにそれで腕に刺青のあるこの人が痛い目に遭うのは絶対に違う。
助けを求めておいてなんだけど、それだけは何が何でもあっちゃいけないことだ。
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