第8話
回転式の椅子でゆっくり反転してこちらに体を向けたマコちゃんは、冷静な顔で「なに?」と言った。
その冷たい目に、私の中には腹立たしさやら悲しさやらもういろんな負の感情が一気に渦巻いた。
「…さっきホノカから電話があった」
「…そっか」
そう言って少し目線を落としたマコちゃんだったけれど、
「…説明してくれる?」
私がそう言ってもう一度こちらに目線を上げたマコちゃんに焦りは全く感じられなかったから、ホノカの言う通り私はもしかしたら本当に部外者なのかもしれないと思った。
「この土日のうちにはちゃんと話そうと思ってたんだけど、…別れたい」
「…は?」
思ってもいなかったその言葉に、私は思わず目を見開いた。
もちろん私が本当に部外者であるならばマコちゃんは私に別れを切り出すだろう。
そんなの考えなくても分かるよ。
でもそれ、今言うの?
それのどこが“説明”…?
「いつ出て行ける?」
マコちゃんはそう言いながら部屋を軽く見渡した。
「荷物は服が多そうだけど…もしカヤがいいなら俺がまとめて送るようにするよ」
いやいや…ちょっと待て。
「すぐにとは言わないけど、できれば早い方が助」
「ちょっと待ってよ、」
淡々と話を進めようとするマコちゃんに私が思わず口を開けば、マコちゃんはやっぱり冷静な顔で話すのをやめた。
ここは確かに元々マコちゃんの家だったし、それなら別れるとなってここを出て行くのはもちろん私だろう。
それもちゃんと分かってる。
でもやっぱりおかしいよ。
私が今話したいことってそれより全然手前の話だよ。
「今はそれ以前に話さなきゃいけないことあるでしょ?」
「荷造りなら俺も手伝うし、出来れば今月中には出てってほしい」
何をそんな迷いもなく…
「いやだから…てか、これからのことを決めるのはマコちゃんなの?」
何で浮気された側がフラれるみたいになってんの…?
「ホノカに聞いたんでしょ?…それが全てだよ。……だから、別れたい」
二度も言った…
コンビニに行くって言って家を出る前まではいつも通り普通に仲良くしてたのに、なのに二度も“別れたい”って…
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