第40話

40


俺達の休日は外へ出るでも無くまったりと暮れていった。

夜、シャワー室から戻る時、隣の部屋の相葉が、傘を片手に寮を出て行くのが見えた。


こんな夜に外出?雨まだ少し降ってるけど…一本余分に持ってる所見ると…


俺が彼の後ろ姿をガン見し過ぎていたせいか、隣りに立っている人物に気付かなかった。

『っ!ビックリした…寮長』

小柄な寮長は見下ろさないと視界に入らなかった。

瑞季よりちっせぇな…。

「相葉だったな…」

腰に手を当てながら寮の出入り口を見つめる寮長。

『あ、…はい。外出ですか?こんな時間に』

「いや、一階の副長が外泊だったから、門扉まで迎えに行ったんじゃねぇか?申請出てた時間だしな。」

『へぇ…そぅっすか。…じゃ、俺戻ります』

「おぅっ。じゃ」

寮長と軽く挨拶を交わして部屋に戻った。

部屋から一歩出ると、松木の事を思い出して警戒する自分がいた。

あまりウロウロしていたくない。

瑞季に心配をかけたくない。

部屋を開けると、瑞季は俺のベッドで丸くなっていた。

ただ…無条件に可愛いと思う存在。

俺にとって多分それはずっと変わらない。

松木に何があったか…相葉に聞いてみようか…。確かいつも一緒に飯食ってる奴…松木のルームメイトだったはず。

アイツ見てると、強がってるようにしか見えないんだよな…。

俺は傘を手に寮を出て行く相葉を思い出していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る