第37話
37
日曜の朝、天気は曇り。
今にも降り出しそうな黒い雲は背中を丸める瑞季の顔を歪めさせた。
『おはよ…痛むか?』
俺は背中から抱き寄せる瑞季の耳に囁いた。
「ん…ちょっと…」
ムスッとした声は寝起きだからなのと…
まだどうやらご機嫌斜めだな…
俺は背中に舌先を這わせながら傷を辿った。
ピチャッと音を立てて舐め上げる。
『薬…塗ろう』
「…舐めるの…やめんな…」
ドキッとして瑞季を覗き込んだ。
「何だよ…嫌なら離れろ」
『まさか…冗談だろ』
俺は瑞季の身体を後ろから抱きしめながら、ケロイド状に盛り上がった傷に舌を這わせ続けた。
ピクン ピクンと時折跳ねる身体を、ギュッと包み込む。
堪らなくなった瑞季がグルっと俺の方を向くと、息を上げて…首に腕を絡めて来た。
唇を重ねて舌先が潜り込んでくる。
うっとりした目で離れて行こうとする瑞季の後頭部を引き寄せた。
『キス…やめんなよ』
「…フッ…仕返しかよ…いい根性だな」
瑞季は不愉快そうに眉を寄せた。
それから、頰に白い手を掛けて…ゆっくり撫でながら俺の唇をまるで猫みたいに舐め始めた。
ゆっくり…
ゆっくり…
俺は堪らなくなって瑞季の唇をしっかり塞いで、舌を絡め深いキスをした。
クチュクチュと水音を響かせ、ソッと離れる。
「おまえの負けだな…」
ニヤッと笑う瑞季が可愛くて、グリグリグリって胸元に頭突きするみたいに潜り込む。
ほっそい腰が逃げるのをおどけながら掴んで離さなかった。
「バカッ!フフッ!やぁめろって!くすぐったい!わぁっ!わぁーった、わぁーった!ギブ!ギブ!」
バフッとベッドを軋ませて、瑞季を押さえつけた。
見下ろした瑞季は暴れたせいで息を切らしながら俺を見上げてくる。
俺は掴んだ両手首から…ゆっくり手を繋ぐ形に持ちかえて…
優しく
優しく…キスをした。
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