第14話

14


その日の夜…瑞季はやっぱりうなされた。


俺の名前を何度も呼んで…

俺は自分のベッドに瑞季を移動させて、腕の中であやした。

画像タイトルを入力…

空になった向かいの瑞季のベッドを見つめる。

ボンヤリとしたウォールランプの光が胸元に抱いた瑞季を艶やかに映していた。



瑞季をあやす事は、実家に居た時からやって来た事なのに…

俺は…その日初めて…妙な緊張を感じていた。


瑞季の普段じゃ聞けない甘い声が…俺に悪い誘惑を仕掛けてくるようだった。

「孝也ぁ…たか…や…」

暗がりなのに…ぼんやり輝く白い肌と、サラサラと流れる髪…俺の名前を呼ぶ声。


息を殺して…


ソッと息を殺して…

いやいや…グッと息を殺して…


俺は…瑞季の唇に



キスをした。


踊り場でされた冗談のキスなんかより、ずっと短くて、触れたかも怪しいようなキスなのに…


罪の意識なのか…

心臓が張り裂けそうにバクバクと胸を揺らして、口をグッと押さえて息を細く吐き出した。


胸の中で眠る瑞季が俺に抱きついてくる。

柔らかな髪が顎をくすぐって


どうしてだか、涙が溢れた。

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