第12話

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「んじゃ、続きの説明なぁ〜。部活動はぁ…」


午後からは移動教室の場所を聞いたり、提出しなきゃならない配布物のプリントが配られたり…俺はすっかり机に突っ伏して眠っていた。

途切れ途切れに松岡の声が聞こえて、何度か「起きろボケェッ」てプリントの筒で頭を叩かれた。


で、そんな事に飽きちゃった俺と瑞季は学校を飛び出したわけだ。

寮に一足先に帰って、のんびり過ごす。

瑞季はパソコンで映画を観てる。

俺はベッドで仰向けになり足を組んでパソコンから漏れる音を子守唄がわりに目を閉じた。

暫くすると、ギシッと俺のベッドが軋んで瑞季が傍らに座って覗き込んでいる事に気づいた。

『…何?映画は?』

「止めてる。ネクタイくらい外せば?見てて苦しい」

そう言って臙脂色の細いネクタイに白い指を絡めて来た。

それを見てると、妙な気分になるから瑞季の手を掴んでやめさせた。

『分かった分かった。外すよ。映画観てろ』

握った手を瑞季の膝に置く。

まるで服を脱がされて行くような感覚を覚えた俺は少し焦っていた。

顔が赤くなってるのを悟られまいと、起き上がりシュッとネクタイを素早く抜き取る。

ブレザーの掛かったハンガーに一緒にネクタイを掛けた。振り返ったら瑞季はまたパソコンに向かっていたから、ホッとして、ベッドに身を沈めた。

どれくらいかして、部屋がノックされる音でウトウトしていた俺は目が覚めた。

俺がまだ寝てると思った瑞季がかわりに扉を開ける。

隙間から見えたのは隣りの部屋102号室の住人…。



「はい」

『どうも…隣りの…相葉です。』

「ど〜も……何か?」

瑞季はぶっきらぼうに対応してる。

『中…入れてくれる?』

ぎこちなく扉が開かれる。俺は客人が来た事を確認してベッドから上半身を起こした。


『お邪魔します…』

『座れよ。俺、杉野孝也、こっちは市川瑞季。クラス同じだったよな?』

ベッドに掛けるように促すと、ペコッと遠慮気味に腰を下ろした。

『うん。俺、相葉雅也(アイバマサヤ)。宜しくね。』


挨拶を終えたそこから、相葉は今日の放課後に起こった話を始めた。

赤いバッチの二年生が教室に来た…

『じゃじゃ馬がいねぇって騒いでね…』

その生徒の名前を聞いて帰ったと。

市川瑞季…その名前を確認して…。

瑞季は鼻で笑うと、悪態を吐いた。

「俺を探しに来てた?じゃじゃ馬ねぇ…アイツら……ぶっ殺す」

『瑞季…アイツらは正当な手段で向かって来るわけないだろ…人数も用意して来てるし…相葉の言う通り…暫く一人になるんじゃねぇぞ』

「…孝也は俺の専属ボディーガードな。」

キラキラ光るミルクティー色の髪の隙間から長い睫毛の瞳が俺を疑いもなく見つめてくる。

俺は瑞季が心配でならなかった。

沈黙で見つめ合う俺達の向かいで相葉が立ち上がる。

『とにかく…市川を狙ってる…あと…うちのルームメイト…副長も….目をつけられちゃったみたいで…俺、全力でフォローするつもりなんだけど…もし、ニノが…一人で居るの見かけたら…付いててやって欲しい。暫く、お互いそうやって、気をつけよう。その方が安全だよ。市川が一人の時はこっちも全力でフォローに回るから。』


俺は相葉と目を合わせると深く頷いた。

それから、瑞季に、目をやると…またムッとした顔で俯いていた。

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