第11話

11


学食は凄い人集りだった。

何とか幾つかあるワゴンからパンを手探りで適当に引っ掴んでゲットした。

瑞季は入り口の向こうで腕組みして壁にもたれかかって俺の帰りを待ってる。

朝、部屋で言われた犬ってのは情けないがあながち外れてはいない。


『ほら…買ってきたぞ』

「外で食おうぜ…花見っ!いいだろ?」

ニッと笑う瑞季に肩を竦める。

外は春の陽気…風が少しあって桜並木から花弁がヒラヒラとゆっくり回転しながら降ってくる。

画像タイトルを入力…

ベンチを見つけて、二人パンを齧った。

『花見、良いな』

「うん…すぐに散っちゃうからなぁ…」

メロンパンを手に目の前の桜の木を見上げる瑞季はまた、儚い顔を見せる。

俺には見えない…何かを思い出す顔だ。


それがまた綺麗に見えるからたちが悪い。

ってか、コイツさっきどさくさに紛れて俺にキスしたよな…

本当、規格外の事を平気でやってのけるからついて行くのが大変だぜ…。ちょっとぶっ飛んだところがある奴だから…あんな事にきっと意味はないに違いない。ただ俺は、普通にドキっとしちまうんだよなぁ…全く振り回してくれるよ。

なんてぼんやり考えてたら、膝の上にゴロンと瑞季の頭が転がって来た。

『ちょっ!おいっ、何勝手に人の膝借りてんだよ!』

「いーじゃん!ケチくせぇなぁ…食ったら眠いんだよ…ちょっと寝る」

『ったく!牛になんぞ!牛にっ!…ってもう寝てるし…』

ハァっと溜息を吐いてソッと髪に触れた。

『サラサラかよ…』

自分でも良く分からないツッコミを入れながら、瑞季の髪に指を通すのをやめられなかった。

キラキラ

キラキラ

光る…ミルクティー色の髪が…

多分俺は…嫌いじゃない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る