第12話
「…あれ?マジでどうしたの?」
なんか今日の川口ノリ悪いな…
「最近部活で忙しくて全然お前に構ってやれてねぇし」
「あー…ははっ、別に私構ってほしいとか思ってないけど?」
私の乾いた笑いにも、やっぱり川口は笑いはしなかった。
「え、マジ?」
その上私の冗談を真に受けちゃうもんだから、私もすぐに顔に貼り付けていた何の意味も持たない笑いを消し去った。
「…嘘に決まってんじゃん」
嘘っていうか冗談っていうか…
まぁ今のこの瞬間ってきっと雰囲気とか流れが大事になってくるだろうからそれをわざわざ言い直したりはしないけどさ。
私のちょっと不本意なその言葉に、川口は何も言わずに私の方へ右手を差し出した。
それが“来いよ”という意味なんだとすぐに分かった私は、迷うことなくその手を取って川口の胸へ飛び込んだ。
私はさっき、川口が本気で寂しそうな反応をするから思わず嘘だと言ったし“構ってほしいと思っていない”という発言だって完全に冗談だったけれど、本当のところはどうだったんだろう。
私は川口からメールが来て嬉しかったりはしたのかな。
でも家を出てから駅までと電車を降りて学校に着くまでの道のりを小走りで来たあたり、たぶん嬉しかったんだと思う。
川口が私を呼んだ目的がアレだと分かっていたから。
それは相手が川口だからとかじゃない。
“目的がアレ”だったからだ。
川口の座るマットはいざそこに乗り上げてみれば見た目以上に大した高さはなくて、私は頭の中で即座に“ここでも何も問題はないな”と判断した。
私を両手で受け止めた川口は、鼻と鼻が今にも触れそうな距離でゆっくりと口を開いた。
「…今からじゃあ間に合わねぇかな」
その囁くような声はやけに艶っぽくて、これから始まるであろうそれを想像したからなのか私の下半身は少しだけ疼いた。
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