第33話

「…してません」


「おう、そうかそうか!何もないならいいんだ。俺はお前の言葉を信じるぞ。でもあれだぞ?もう紛らわしいことはするな?」


その言葉に、私が信用されているとはとてもじゃないけど思えなかった。



でも別に信じてほしいと思っていないのも事実で、もちろん今の私の現状を話して相談なんて以ての外だ。


だから素直に「はい」と返事をして私は先生との話を終えた。



先生まで巻き込み始めると面倒だな…


あの担任、無駄にいい先生になろうとしてる感あって暑苦しいし。



「はぁ…」



小さくため息を吐きながら、私は置きっぱなしにしていた鞄を取りに教室へ戻った。


校舎にはもうほとんど人はいなかった。


グラウンドの方からは部活に励む人達の威勢のいい声が聞こえる。



“人の環境散々かき乱しといて自分はとっとと中学卒業しちゃうんだもん”



なぜか今、サナの言葉がぼんやりと蘇った。



“晴れて自由の身?青春を全力で謳歌しちゃってる感じ?”



「青春ねぇ…」



こうなったらいっそ金髪にでもして大幅な路線変更でもしてしまおうか。


…いや、調子に乗ってるって思われてしまったら私が損するだけか。


何よりそんなことしたらお母さんがびっくりして———…



自教室を目の前にしたところで、藤野を含む三人の女子がバタバタと教室から私のいる廊下へと出て来た。


“バイバイ”と声をかけてみようか一瞬迷ったけれど、三人の私を見る目がやけに楽しそうで私はすぐにその迷いを頭の中で断ち切った。



先生に言ったのはもしかすると藤野かもしれない。



私の横を通り過ぎると、三人はわざとらしくキャッキャと騒ぎながらどこかへ走って行った。



「何なの…」



それを不思議に思いながら教室に入ってみれば、誰もいないそこの私の机にこのクラスの大きなゴミ箱が置かれていた。


あぁ…それで笑ってたのか…



“ゴミ捨てとけよ”ってことね。



それから黒板は、放課後にもかかわらず何やらとても騒がしかった。

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