第30話
「本当は今サチが持ってるやつも持っていけばデータ丸々移してもらえるらしいんだけど…いらないでしょ?」
その言葉に手元のスマホからゆっくり顔を上げれば、お母さんはやっぱり笑っていた。
でも、きっとその笑顔に込められた意味はさっきまでのものとは少し違う。
母親なら何でも分かるのかな。
私が今学校でどんな状況か。
「サチ」
「…はい」
「わざわざ嘘なんかつかなくていいから。帰りが遅くなったって問い詰めたりしないよ?もう高校生なんだし。でもこれからは遅くなる時は前もって連絡してね」
「…ん」
なんだ…私の嘘、バレてたんだ…
「サナはああ言ったけど、別にサチが放課後何をしようがサチの勝手なんだよ?お小遣いだってサナにも似たような額あげてるんだし自由に使っていいんだから」
あぁ…私…
「でも何かあれば言ってね。お母さん、絶対サチの味方してあげるから」
もう二度と、絶対にお母さんを悲しませちゃダメだ。
「…ありがとう」
大丈夫。
絶対、守るから。
ご飯を食べ終えてお風呂に入った私は、自室に戻るとすぐに前の携帯から必要最低限のデータを新しい携帯に移して電源を落とした。
登録してある連絡先がお母さんとサナとトモキくんのみになったことには、我ながら情けない笑いが溢れた。
久しぶりに静かに寝られた夜は当然のように快適で、眠りにつけばあっという間に朝が来た。
でもサナの予想通り、私の携帯が静かだったのはそれからたったの四日間だけだった。
サナも言っていたけれど、本当に誰がどうやって私の新しい携帯の番号なんかを手に入れたのだろう。
心当たりは一つあった。
体育の時間。
基本肌身離さず持っている携帯が私から離れるのはその時だけだからそれしかない。
更衣室にある制服のポケットから私の携帯を勝手に操作した人がいるのだろう。
それなら暗証番号はどうやって分かったのかとすぐに不思議に思ったけれど、みんなの行動の全てをいちいち考えていたらキリがなさそうでもうやめた。
真実を突き詰めたところで広まったという事実は変わらない。
トモキくんには一応ラインから新しい番号を送っておいたけれど、既読がつくだけで返信はなかった。
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