第35話
そんな中、気付けばあの駅でニシヤマくんを見かけた日から早くも二週間が経っていた。
一時に休憩に入った私は、フロアの大きな窓に沿うように作られた席の隅でコンビニのサンドイッチを食べていた。
でも気付けばサンドイッチを口に運ぶ手は止まっていて、私は無意識に窓の下でたくさんの傘が行き交うのをぼんやりと眺めていた。
雨だなぁ…
梅雨明けはいつかな。
七月に入ったし、きっとそろそろだな。
晴れてほしいけど本音を言えばそこまで晴れてほしいわけでもない。
だって天気の良い日が続いて、それでも彼がそこに現れなかったら私は一体どうなるのか。
もうそれって完全に終わりじゃない…?
その方が良かったりして。
止めていた手を再び動かしてサンドイッチをまた一口食べたその時、
「ここ暗っ!!」
その声に振り返ると、ユマちゃんがお店のトレイを持って真後ろで天井を見上げていた。
「電球は別に切れてないな………あぁ、なんだ…ナナミがいるから余計そう感じたのか」
ユマちゃんはそんな失礼なことを言いながら私の右隣の席へ腰を下ろした。
「……ユマちゃんも休憩?」
ユマちゃんの持っていたトレイにはこの店のクロワッサンとコーヒーが乗せられていた。
「うん!今日暇だよね。一緒に休憩取れるとか超レアじゃない?」
「……だね」
私が話を広げようともせずにそう呟くと、ユマちゃんは「はぁ、」と少し呆れるように息を吐いた。
「テンション低いねぇ」
「……」
「いつもの三割り増しで地味だね」
「…ユマちゃん最近私に遠慮ないね」
「あははっ、冗談だって!で、どした?」
ユマちゃんは軽い口調でそう言うと、目の前のクロワッサンの端を少しちぎって口に運んだ。
「いや…雨だなって」
「あー…ね。でもいいじゃん、私達仕事が外じゃないだけまだマシだよ?」
ユマちゃんはそう言いながら正面を向いたかと思うと、「見てみなよ」と言って真下を行き交う人たちを指差した。
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