第32話

女の人と一緒にいるだけならまだしも、何あれ。


壁に手をついてあの女性に自ら歩み寄ってるあの感じ、何なの?











…あぁ、それか。



今までも女の人が隣にいるところは何度も見たことがあるのにここまで嫉妬しなかったのは、いつも女の人の方がニシヤマくんに歩み寄っているような雰囲気だったからだ。



土手沿いに座る彼の隣だとか、高校生の時の彼を呼び出す女の子だとか、“カスミ”さんだって彼女だけどいつも“カスミ”さんがニシヤマくんのところへ行っていた。





だから勝手に都合よく考えてた。





実はそこまでニシヤマくんは“カスミ”さんのことが好きじゃないんじゃないかなって。



本当に余計なお世話だなぁ、私。


透明人間がよくもまぁそんなこと思えたよね。





あの時のニシヤマくんと“カスミ”さんのことはよく分からないけれど、でも今さっき見たあの光景は間違いない。




ニシヤマくんは今の女性に自ら歩み寄っていた。






ホームの中で電車を待っているといろんな人の濡れた靴の足音がキュッキュッと聞こえて、空気は少しジメジメしていた。



病んできたな…

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