第10話

でも本当はユマちゃんも私とは住む世界の違う人だ。



「えっ!?ナナミ、すっぴんっ!?」


「うん、寝坊しちゃって…」


「さすがにファンデーションくらいはやんなきゃ!!こっちまだ大丈夫だから、やってきなよ!!」



明るくて、可愛くて、優しくて、気が利いて、…まるでニシヤマくんの彼女だった“カスミ”さんみたいだ。




…いやまぁあの人が優しくて気が利く人だったかどうかは知らないけれど。




「いいよ、別に。誰も見てないし」


「分かんないじゃん!!やっといて損はないでしょ!!ていうかその顔でよくここのエントランス入って来れたね!?」


ちょっと失礼なその言葉にも、ユマちゃんの人柄をよく知る私からすればどこか面白くて思わず小さく笑ってしまった。


「あははっ、うん。でもさすがにあの混んでるエレベーターには乗れなかったなぁ」



エレベーターが混んでるのは毎朝のことだし、もちろん私がエレベーターを使わないのも毎朝のことだけど。



「当たり前でしょ!ただでさえスーツじゃない私たちは肩身が狭いのに…今日の仕込み少ないから今のうちにやって来なよ!」


もう私が化粧をしに行くのは決定なのか、手を洗い終えた私がはめようとしていた手袋をユマちゃんは勢いよく奪い取った。

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