第4話

「今窓開けてるから」


「閉めろよ。今十二月だし今日は天気だってそこまで良くねぇぞ」


「うん、でも換気したかったから」



部屋をぐんぐんと進んだソウちゃんは、私がさっき全開にした窓の際に立って外を見たりそこにあるバルコニーを左右に首を振りながら見ていた。



「…そのバルコニー、私の体重に耐えられるのかな」


「大丈夫だろ」


「かな。抜け落ちそうでちょっと怖い」


「それはさすがにねぇだろ」


ソウちゃんはそう言いながらも、左右に手をつきながら右足をバルコニーに下ろしてガンッガンッとその強度を確かめていた。



「大丈夫そうだぞ」


「なら良かった。ありがとう、ソウちゃん」



私がさっきベラベラと話したタオルを長持ちさせる方法は、実際のところ私はそれをソウちゃんに伝えたかったわけではない。



きっとコインランドリーを日常的に使う自分の生活水準に対する恥ずかしさを少しでも肯定したかった。


ソウちゃんに私の生活水準をバカにされたことなんて一度もないしさっきだってもちろんソウちゃんにそんな雰囲気は感じなかったけれど、それを肯定したかった相手はソウちゃんじゃない。




私は私自身に肯定したかったのだ。





「もう閉めていい?」


「うん!コーヒーでも入れるね!」


「越してきたばっかなのにそんなもんあんのかよ」


「さっき必要最低限のものは買ってきたから」


部屋の隅に持っていた紙袋を置いた私は、そのまま手前の部屋にあるシンクのところに置いていた袋からここに来る前に買ってきた最低限の食器などを取り出した。



「それ、」


突然背後からそう声が聞こえて顔だけで振り返れば、すぐ真後ろにはソウちゃんがこちらを覗き込んでいた。


「俺用?」


そう言いながらソウちゃんが指を差していたのは、私が両手に持つマグカップだった。


「うん。ソウちゃん、コーヒー好きだし」


「いや、俺が言いたいのはそこじゃない」


「え?」


「一人暮らしなのにマグカップ二つ買ったのはあえてだろ?だからそれ、俺用かって」


「あぁ、うん。ソウちゃんなら頻繁に来るかと思って」



私がそう言って両手のマグカップをシンクへ置いて洗い始めれば、真後ろに立つソウちゃんはじっとそこで私を見ていた。

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