第3話

「それより持ってきてくれた?」


「持ってきたよ。俺のいらない服なんか何に使うんだよ」


そう言いながらソウちゃんは手に持っていた紙袋をこちらに差し出した。


「ありがとう…!」


私はすぐにお礼を言ってその紙袋を受け取り、その持ち手である紐を両手で開いて中を確認した。



「掃除に使おうと思って。Tシャツなら雑巾代わりになるでしょ?」


紙袋の中身は私があらかじめ指定していた薄手の服ばかりで、見た感じどれもちゃんとその役目を果たしてくれそうなものばかりだった。



「それなら初めから雑巾買ってきてって言えよ」


「えー、雑巾買うってもったいないよ」


「ならせめていらないタオルとか」


「え?いらないタオルって何?」


ソウちゃんが何の気なしに言ったその言葉が引っかかった私は、紙袋を覗いていた顔をさっと目の前のソウちゃんへと上げた。


そんな私に、ソウちゃんはちょっとだけ面倒くさそうな顔をした。



「タオルにいらないとかある?」


「古くなったやつとかヨレてるやつとか」


「え、タオルって古くても破れてなきゃ洗濯して何度でも使うものだよね?」


「人によるだろ、それは」


「それはそうだけど…でも使えるか使えないかで言ったら使えるものだよね?」


「……」


「ヨレてもさ、逆に柔らかくなって肌に馴染むっていうか…いい感じにならない?」


「……」


「ていうかそもそもね、タオルって干し方とか乾燥の仕方でふわふわを長持ちさせることができるんだよ?例えばタオルに乾燥機を使うのはすごく良くてね、洗濯後のタオルを回転させながら乾燥させるからタオルは乾燥中も空気を含めるの。だから普通に外で干すよりもふっくら仕上がるんだよ?それもコインランドリーとかなら大きいドラムだから尚更良くてね、タオルが大きく回転できるからパイルがしっかりと立つんだって」


「……」


「それにそもそも破れたりヨレたりしてるタオルをソウちゃんのお母さんが溜め込んでるとは思えないけどな。だってソ———…」


ソウちゃんはもういいと言わんばかりに、右手を私のおでこに押し当てて私の言葉を遮った。



「分かったからとりあえず部屋入れて」


「…あ、うん」


私がすぐに道を開けるように右にズレながら「ごめん、つい」と言えば、ソウちゃんはそんな私をわざとらしく無視するように靴を脱いで部屋に上がると「この部屋寒すぎ」と言った。

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