第30話

その愚痴は「喧嘩した」とか「たまには俺と会うために予定を合わせてほしいのに」とか…



二人が別れるのは時間の問題のように思えた。



彼のことを全く知らない友達に彼のことを話すと、「彼女の愚痴を他の女に話す男は最低だ」と言われた。


確かに最低かもしれない。


でもそれを聞いて私は少なくとも安心しているし、今後の自分との展開に期待を寄せている部分もあるから彼だけを責めることなんてできない。


それに結果的にその彼女と別れるならもう何も問題なんてないんじゃないかな。





それから数ヶ月が経った頃のサークルの飲み会で、彼は当たり前のように私の隣に座った。


「最近寒くなってきたね」


「ですね。うち先週耐えられなくなってコタツ出しました」


「うわっ!いいね、コタツ!」



私達の関係に、特に変化はない。


でも、彼にとって私は明らかに他の人よりも深い関係値にいるような気はしていた。




その日の帰り、私は家の方向が同じである彼と一緒に歩いて帰っていた。


その時、不意に手を繋がれた。


なんとなくこんな日が来るのは近いんじゃないかと思っていた私は、ドキドキしながら彼を見上げた。




「お前、俺のこと好きでしょ?」




そんないつもの彼らしくない言葉遣いに私はとても驚いた。


彼は酔っていたのかもしれない。


彼に“お前”なんて言われたことは一度もないし、その男らしい雰囲気に男性経験の全くない私はとてもドキドキした。



「…そうだって言ったらどうするんですか?」


「…休憩してく?」


そう言って彼が指を差したのはラブホテルだった。



「あの…えっ…と…」


「……」


彼は何も言わず、少し甘えるような目で私を見ていた。



「…そんな顔するなんてずるいです…」



断れるわけがなかった。


どんな流れだろうと、きっと私はずっとこの時を待っていたんだから。





経験のない私に、彼はものすごく優しくしてくれた。


「キスしてもいい?」

「服脱がしてもいい?」

「触るよ?」

「可愛いね」


いちいち言葉をくれる彼に、私の中に少なからずあった行為への怖さはすぐになくなった。



「痛かったら言ってね」


そう言ってゆっくり私のナカに入ってきた彼は、それからもゆっくり丁寧に私の体を刺激してくれた。


そのおかげか、痛いのは初めだけですぐに私は全身が快感に包まれた。


この快感はきっとこの行為から得られる刺激ばかりではなかった。



この人とこうしていること自体への興奮が、きっと私の体のいたるところを刺激していたんだと思う。

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