第27話
彼はそれ以降、たまにサークルの集まりに顔を出すようになった。
聞こえてきた話によると、このところサークルに顔を出せなかったのは本当にバイトが忙しかったらしい。
三月に辞めた学生組の穴埋めで大変だったんだとかなんとか…
彼がサークルに顔を出しても私との接点は特になかった。
サークルはあまりに自由で、みんなテニスの上達ではなくテニスを楽しむことに力を注いでいるようだった。
彼がいる時は毎回その後の飲み会にも参加した。
もちろん彼がいない時もその後の飲み会に顔を出したけれど、彼がいないとなれば私はすぐに家に帰った。
それでも私はずっと彼との接点を持つことができないまま、気付けば夏が終わろうとしていた。
私って何のためにこの大学に来たんだっけ。
彼に関われなきゃ何の意味もない。
そろそろ何かアクションを起こさなきゃ…
そう思っていた矢先、飲み会の途中で彼は携帯で誰かと話しながら机の上に出してあった財布と煙草を持って部屋を出て行った。
その日、彼が部屋に戻ってくることはなかった。
「あの…スワさんってどこ行ったんですか?」
彼とよく話している先輩に近付いてそう聞けば、その人は「彼女のとこじゃない?」と教えてくれた。
飲んでる途中に電話がかかってきて彼女の元へ向かうだなんて、相変わらず彼は彼女のことが大好きなようだ。
嫉妬心が渦巻く中、少なからず私はそんな彼に安心もした。
やっぱり彼は何も変わっていないし、私の思った通りの人だ。
一途で素直で、きっとものすごく彼女思いな人なんだろう。
ゆくゆくは彼とどうこうなりたいと思っている私にとって、それはとても有益な情報だった。
———…チャンスは突然訪れた。
ある日の飲み会でみんなかなり酔いが回ってきたころ、
「大丈夫?」
突然言葉をかけてきたその声に、私は思わずハッとした。
それからすぐに目の前の烏龍茶から顔を上げると、いつの間にか私の前の席には彼が座っていた。
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