第25話

大学に入学して二週間経っても私は学内で彼を見かけることはなかった。


その間に「見学においでよ」とテニスサークルの違う先輩に言われて、彼がいるんじゃないかと思った私は言われた通りノコノコとその集まりの見学に行った。



でも、彼の姿はなかった。


誰かに聞こうかとも思ったけれど、“なんでそんなこと聞くの?”とか“知り合い?”とか…もしくは本人に私のことが伝わったりするのが怖くて私は何も聞けなかった。




それからしばらくして行われたサークルの新入生歓迎会にも、彼の姿はなかった。


高校の時はあんなにテニス大好きって感じだったのに、今はそうでもないのかな…


もしくは私、サークル間違えた…?



でも私はSNSでしっかり“テニスサークルのメンバーで飲みに行った”という彼の投稿をつい最近確認していた。


その写真の中に映っていた別の先輩の顔も、このサークル内でしっかり確認した。


この大学にはテニスサークルだけでもいくつも数があるらしいけれど、だからといって私はサークルを間違えてはいないと思う。



未成年だからお酒も飲めない、友達だってまだ一人もいない、その上私の目的である彼もいないもんだから、私にとってその歓迎会は退屈で仕方なかった。



結局一次会の最後までなんとなく居座り続けた私だったけれど、やっぱり最後まで彼が現れることはなかった。




それから私の大学生活は本格的にスタートした。



私がこのサークルに入った目的がテニスではなく彼だったとはいえ、全く未経験の私が入ってはたしてサークルの活動として成り立つのかと少し心配な部分もあったけれど、サークルの人達はみんな優しくて特に心配の必要はなかった。



それに、テニス未経験の人は私だけではなかった。


じゃあその他の未経験の人達がなぜこのサークルに入ったのかは分からないけれど、


聞くところによるとサークルというものは部活に比べてかなりゆるいらしく、集まりも週にニ回程度で来られる時のみの参加でいいらしい。


そしてその度にそのあとは飲み会があるんだとか。


ちなみに飲み会のみの参加も大歓迎だと別の先輩が教えてくれた。



しっかり活動や飲み会に参加していれば、いつか彼にも会えるだろう。



それに私には二年もあるから。


私はとても気楽に構えていた。

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