第4話
2
華菜恋が陽向ならば、芽衣胡は日影――表に出ることを許されない日影の子。
華菜恋と芽衣胡は双子だった。
可愛くて瓜二つの双子だった。
しかし、双子は不吉だとする祖父と父は次女の芽衣胡を「殺せ」と言った。
――双子など災いのもと。火種となる前に殺してしまえ!
だが芽衣胡の母は、芽衣胡を腕に抱いてその小さな命を守る。
――この子を殺すならば、わたくしも一緒に死ぬまで。どうか、どうか殺すなどと言わないでくださいませ!
必死の懇願に負けた祖父と父は、芽衣胡を生かす代わりに自分の前に連れてくるなと吐き捨て、どこかへ捨てるよう命じた。
そして万里小路に生まれた姫は華菜恋一人としてお披露目される。
双子ならば二人で一つ。
しかし二人に分け与えられるべきものは全て華菜恋に与えられた。
万里小路の全てを与えられる華菜恋と、死の代わりに何も与えられることのない芽衣胡。
芽衣胡は万里小路の名さえ冠さない。親なし孤児となった芽衣胡は育児院に身を寄せることとなる。
芽衣胡は影――日の下に出ることを許されない日影の子。
芽衣胡が見るのは闇。
闇の子は闇の子らしく視力などなかった。ただ右の瞳にだけぼんやりと微かな明かりが届く。
芽衣胡はそれを仏様から与えられた希望の光だと信じて疑わず、光明寺に坐す阿弥陀様へ朝な夕なに手を合わせたのだった。
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