第32話

「僕には素敵な恋人同士に見えたんだけれど。すまないねえ、余計なお世話だったか」





おじさんは眉を下げて小さく笑っていた。


私を見て、それからゆっくりとハルナさんを見る。




ハルナさんも丸眼鏡越しにおじさんのことを見ていた。




「俺としては光栄ですけど」


「ちょっと!」


「やっと回ってきたチャンスだしねえ」




カーブに差し掛かり、電車が揺れる。





「──俺はね、今回にかけてるの」






パアアアア…!


反対側の路線を走る電車とのすれ違いであまり詳しくは聞こえなかったけれど、ハルナさんはそう言っていたと思う。







口説き?


ずっと私を狙ってたって?



だから、私のイチゴオレを飲むの?


私の名前も知っていたの?


この人は──いったい。

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