第30話
「ああいいですねえ、日光に行かれるのですか?」
すると、何処かから声がかけられた気がして顔をあげる。
ハルナさんではなかった。
途中の駅から乗車してきた、私の隣の席の男性だ。
白髪がところどころ目立つけれども、物腰がすごく柔らかい感じのいい人だった。
40代〜50代に見えるその人は、私が開いている観光マップをシゲシゲと眺めている。
「あ、はい。そうです」
「いいなあ。開いているのを見ていたら僕も久々に行きたくなりました。よく日光には行かれるのですか?」
「うーん、どうでしょう。確か前回訪れたのは……」
そう聞かれるとどうだろう。
最後に訪れたのは確か…。
「そうそう、先月です。ゴールデンウィークに」
「先月ですか…。ゴールデンウィーク、いいですね。最近ではダイヤ改正で浅草から日光へもさらに行きやすくなりましたし」
「へえ、ダイヤ改正……そうなんですね」
ポロシャツにチノパンを履いているおじさんのことを見上げる。
「やっぱりいいねえ、東照宮は」
腕を組んでいた彼は誇らしげに語り始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます