第28話

「なにそれ、可愛い絵だねえ」


「……ちょっ、勝手に見ないでください」





いつのまにか手帳に影が降りてきていることに気づき、それを慌てて自分の胸に引き寄せる。


向かい側からシゲシゲと見てくるのはハルナさんだ。



この瞳がさっきまで涙を流していただなんて、到底想像もできない。




「隠すなよ」


「日記なんだもん。他人に見られていい気しません」


「えーケチー」


「ケチもへったくりもないですっ!デリカシーなさすぎ!」



不満そうに唇を尖らせているハルナさんは、ジーンズを擦らせてのそりと脚を組む。




「中身は見てないから安心してよ」


「変わらないから!」


「大丈夫大丈夫。女の子の似顔絵が見えちゃったーとか思ってないし」


「ちょっと!やっぱり鮮明に見えてんじゃないですか!っていうこれは女の子じゃ……、」





どうみてもハゲているおじさんで……、





「ん? 女の子だったよね?」


「えぇ? これの何処が女の子…、あ…」





思いつきで手帳をひっくり返してみてハッとした。






「確かに女の子だ」




こっちから見たら、ショートヘアの女の子の絵に見える。残念ながらすごく絵心がない。

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